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独り言 その壱千四百九拾五

 大きいだけの鈴蘭です。

 本当は、前置きの後に昨日のスプラの振り返りで触れた『武器への理解の浅さが仇になっている点』について書こうかと思っていたのですが…。
 気付けば前置きがエラい長さに。
 この話は、また改めてすることにします;






 フランスの暴動…『黄色いベスト運動』は過激さを増しています。
 暴動に参加している人たちが着用している『黄色いベスト』ですが…これは、タクシー運転手などが車外に出て作業をする際、フランスでは事故防止のために黄色い蛍光塗料を塗られたベストを身に着けるよう決められているもので、『政府への抗議活動における労働者のシンボルとして、手持ちのベストを着用しよう』というフェイスブック上での呼びかけによって広まったようです。

 労働者階級の象徴として黄色い布を身に着けて、為政者への急進的な抗議活動を展開する…ですか。



 …黄巾の乱?



 いえ、思わず結び付いてしまったもので…;
 確かに黄色い布をシンボルにしているところなど、似ていると言えますが…。
 黄巾の乱では、張角という宗教指導者が主導していたのに対し、ネットを媒介して広まった『黄色いベスト運動』では運動を主導する明確な指導者が存在しません。
 これが両者の決定的な違いであり、この違いが運動の解決を難しくしている原因になっています。
 なにしろ、フランス政府が対話による解決を望んでも、交渉すべき相手…代表者がいないのですから。

 現状、フランス政府としては、運動に参加するすべての人を対象に呼びかけるしかない訳ですが…。




 …だからといって、ちょっと性急すぎる…というか、軽率じゃないでしょうかね;

 マクロン大統領は、親兄弟が全て医者という上流階級の出身で、庶民の感覚とは縁遠い人と言われています。
 税制改革において富裕税を廃止したことで、上流階級の人間による上流階級の人間の為の政治をしていると批難され。
 更に、フランス政府の二酸化炭素排出削減の方策として化石燃料への増税を行う一方で、エコカーの購入に補助金を出す政策を決定した際…。

 『ガソリンが高くてガソリン車に乗れないというのなら、電気自動車を買えばいい』

 …というマクロン大統領の発言が独り歩きし、マリー・アントワネットの『パンが食べられないならケーキを食べればいい』という言葉と結び付けられて、庶民が反発。
 これが今の運動の激しさに繋がったともされています。

 先の言葉、マリー・アントワネットの言葉として有名ですが…。
 これはフランス革命を画策した反体制側の流言であったことが分かっています。
 ある貴族の手記の『折角ワインを飲もうと思ったのに、ツマミにするパンが無い。仕方ないので棚にあったブリオッシュ(ニュアンス的には菓子に当たる)をツマミにしてみたが…これがなかなかに美味い。パンが無ければブリオッシュもいいかもしれない』という一文が、政府の庶民軽視のイメージを形成するために改変され、マリー・アントワネットの発言として広められたのです。

 フランス革命の二の舞は御免だという事で、マクロン大統領は事態の収束を図ったのでしょうが…。
 議会にも諮らず、選挙もせずに政策を方針転換させては、今後に禍根を残しかねません。
 政策の不満は暴力によって解消できる。
 大統領のこの声明は、その前例になってしまいます。
 それはポピュリズムの極致であり…民衆による極めて民主的な非民主政治です。

 これで国政が成り立つのであれば、大統領も首相も、議会も必要ありません。
 広場の真ん中に旗でも立てて、『一番最初に旗を取った人の言うことを聞く』とでもすれば良いのです。
 少々、例えが極端ですが…マクロン大統領の声明は、フランスの政治をそのレベルに落としかねない危険なものだと思います。
 法に則った対応を明確にし、犯罪を犯した暴徒を捕える一方で、対話を進めるための代表者の選出を『黄色いベスト運動』の参加者に求める…くらいはしても良かったと思うのですけど…。
 現実には難しいのかもしれませんね。
 聞けば、士気の低下から暴動に対応すべき治安部隊の中からも暴動に参加する者が現れているとか。
 マクロン大統領はその状況を見て、対応に時間を掛けるだけの余裕が無いと判断したのかもしれません。
 しかし、だからといって…。



 …ここで、ふと。
 子供の頃に聞いた昔話…題名は忘れましたが…を思い出しました。



 あるところに、相棒の馬と力を合わせて畑を耕して暮らす百姓の青年がいました。
 青年は、粗末な食事に添える御猪口一杯の酒を楽しみに、日々を慎ましく送っていましたが…。
 あるとき、その暮らしぶりに感心した神様が、青年へのご褒美に『底を叩けば酒が湧き出す魔法の徳利』を授けます。
 喜んだ青年は、それ以来、御猪口一杯の酒をお替りするようになり。
 やがて、御猪口で満足できなくなって、お椀で飲むようになり。
 ついには、徳利の底を叩いては飲み、叩いては飲み…と、畑仕事を顧みずに酒浸りの生活を送るようになってしまいました。
 そんな生活をどれだけ続けたことでしょうか。
 ある日、酔っ払って家の外に転がり出てしまった青年は、そのまま眠りこけてしまい、外で朝を迎えます。
 朝日に照らされ目を覚ました青年は、心配そうに自分を覗き込む目を間近にして驚きました。
 それは、酒浸りの生活を送る内に世話をしなくなっていた、相棒の馬でした。
 その姿は垢で汚れ、痩せ細り…かつての面影はありません。
 大事にしていたはずの相棒の変わり果てた姿に、青年は涙を流して謝りました。
 節度を忘れた自分が愚かだった、と。
 改心した青年は家に戻ると徳利を叩き割り、元の慎ましい生活に戻ったそうです。



 民衆は、常に無限に酒の湧き出る魔法の徳利を求めています。
 そんなものは無いのだと、自制できる人間など稀でしょう。
 民衆は、無限に酒の湧き出る魔法の徳利を手に、飲み明かすことを選びます。
 痩せ細った馬の姿を前に、悔い改められる人間など稀でしょう。
 
 民衆に無限に酒の湧き出る魔法の徳利を与えることは政治とは呼べません。
 求めに応じて与えてばかりいては、人であれ国であれ腐って朽ちてしまいます。

 今のマクロン大統領は、私などの目には『これが欲しければ言うことを聞いてくれ』と魔法の徳利を掲げているかのようで…。
 ひどく不実なことをしているように見えるのです。
 しかし…声明を出してしまった今、もう後戻りはできません。
 出来る限り、穏便に済んで欲しいと思いますが…。
 どうなることでしょうね;
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